北海道は日本国内において最大の農業地帯で、私たちの農場がある空知は稲作を中心として小麦や大豆をはじめ多様な農産物が生産される環境です。空知には、疎水百選(農林水産省)に選定された北海幹線水路があります。総延長80㎞にも及ぶ農業水路は、日本で最も長い用水路であり東洋一の規模を誇っています。農業生産の好適地と判断した先人たちの大きな決断で、土地改良に臨んだ地域でもあります。
私は、この農業に適した大地を耕し続け、子どもたちやその子供たちに継承する責任があります。先代は開拓から戦中の混乱期までの化学肥料のない時代から、魚粕や骨粉を農地に散布し、家畜の排せつ物や収穫後の残渣物を土壌に存在する微生物の力で堆肥化し土に還元してきました。まさに、資材自給の時代の農業です。
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峯農産食品のおもい
今は、輸入資源に依存する日本農業の体質は弱みが現れてきています。大切な資源は身近にもあります。今日、下水道を通じて処理場に集まる生活排水やヒトの排せつ物も”微生物の力によって分解され利用効果の高い有機由来の資源”となっていて注目を寄せ始めています。それ故、各地で様々な取り組みが行われています。
化学肥料のように効果をすぐに認る事は望めませんが、峯農産食品はこれからも年月を重ね微生物の力をかりて土壌を健全にして多くの生き物が集まる土の環境と資源の循環の姿を追求し農業を進めていきます。地域の資源を大切に使い、農と食・都市とをつなぐ「じゅんかん」が農場の大切なおもいです。
峯農産食品は、土づくりを通して「人間と地球と利潤の間に矛盾のない農業」を目指していきます。
峯農産食品株式会社 代表取締役 峯 淳一
汚泥堆肥を冬季の屋外で完熟させたのは日本初!
堆肥作りを始めたのは就農した1982年のことです。父である先代の忠一が「土づくりを考えるように」と堆肥盤を用意したのが始まりでした。それからおよそ30年、試行錯誤と失敗の連続でした。稲わらに硫安や石灰、窒素を添加したり、牛糞を使ったこともありました。しかし、思うように完熟が進まず、納得のいく堆肥を完成させられずにいました。そんな時、市役所の下水道課に勤めていた高校時代の同級生に、「下水処理場の汚泥を利用してみてはどうか?」と提案され、使ってみることに。屋外の堆肥場で稲わらやもみ殻を混合し、何度も試行錯誤した末、2010年頃に冬季の屋外で完熟した堆肥を生産することに成功しました。堆肥の中の温度は約60℃に保たれ、凍てつく北海道の寒さにも負けず、雪の下で発酵を続けます。他県ではコンポストを利用して汚泥堆肥を完熟させた事例がありましたが、私たち峯農産食品が取り組んでいた”冬季の屋外”という条件下で汚泥堆肥を完熟させた事例は国内で初めてでした。現在は地元である岩見沢市との連携や農林水産省等国の機関や道内企業かのら視察受け入れ、農業関連イベントでの講演活動などを通し、地域資源を有効活用した循環型農業の取り組みを広く皆様へお伝えする活動も行っています。
汚泥堆肥を活用した米づくりは順調です。岩見沢市と連携し、産業廃棄物扱いだった下水道汚泥は地域資源となり、現在では100件近い農家が農地で活用するようになりました。若い農業者の利用も進んでいます。米だけではなく、他の農作物でも収穫量の増加がみられています。一時、下水道汚泥による重金属汚染の影響を懸念する声もありましたが、数年に渡り土壌成分の調査をした結果、一般的な土壌となんら変わらない数値ということが判りました。また、10年以上汚泥堆肥を連用することにより、地力窒素が高い土壌になり、カリウムも増加傾向にあります。現在は微生物の研究を進め、汚泥堆肥との因果関係を明確にし、国内資源である下水道汚泥を活用した循環型農業が増えることに寄与していきたいと考えています。